2021.11.01 Mon
第3回:無線講座「準同期フレームフォーマット」
ローカル5Gでは昨今、準同期フレームフォーマットの拡張という話がしばしば話題に上がります。今回は準同期フレームフォーマットについて説明をしたいと思います。
TDDとは
ラジオやテレビといった片方向の通信のシステムと異なり、ローカル5Gを含むデータ通信は基本的に双方向通信のシステムです。一般に基地局から移動局への通信を下り通信、その逆を上り通信と言います。この上り通信と下り通信を同時に実現するためには、物理的に異なるリソースを使用する必要があります。主に、周波数を分けて通信を行うFDD(周波数分割複信)、時間を分けて通信を行うTDD(時分割複信)が使用され、ローカル5GではTDDが使用されています。
図1 TDDイメージ
時間同期
TDDでは、異なる基地局間で送信タイミングを同期させる必要があります。もし同期せずに別々のタイミングにしてしまうと、隣の基地局に接続している移動局の信号が、自分が受信したい遠くの基地局の信号の邪魔をしてしまいます。これにより、通信ができなくなる恐れが出てきます。こういった問題を回避するため、TDDのシステムでは基地局間で送信タイミングが同じになるよう同期して動作しています。実際に、国内の5G(正しくは5GNR)の基地局の送信タイミングは全て揃っています。またローカル5Gの基地局も例外ではなく、同じタイミングで送信しなければなりません。
図2 隣の移動局からの干渉
フレームフォーマット
前述の理由により、すべての基地局のフレームタイミングは同期して送信されています。では、下り通信と上り通信のタイミングはどのようになっているのでしょうか。
キャリア5Gと言われる公衆網の5Gでは、図3の同期方式と言われるフレームフォーマットが使用されています。図中の”D”は下り通信(Downlink:ダウンリンク)、”U”は上り通信(Uplink:アップリンク)、”S”はSpecial Subframe(スペシャルサブフレーム)を意味します。スペシャルサブフレームは、下り通信から上り通信への切り替えタイミングとなります。
公衆網では多くのユーザーが動画を見たり、記事を見たりと下り通信のトラフィックが多いために、下り通信の比率が高くなっています。ローカル5Gのユースケースには監視カメラやセンサーネットワーク等がありますが、これらのケースでは上り通信のトラフィックが多くなります。この場合、「同期方式」のフレームフォーマットでは効率が悪くなってしまいます。そこで考え出されたのが「準同期方式」で、「同期方式」の下り通信のタイミングが一部上り通信に置き換えられて、上り通信の比率を高めたフォーマットになっています。こうして下り通信と上り通信の比率が同じ程度のものが現在ローカル5Gでは使用できるようになっています。
しかしながら「準同期方式」を使っても、一部のローカル5Gのユースケースで要求されている上り通信のトラフィック量には、充分に対応できていません。そこで、さらに上り通信の比率を高めたフォーマットも現在検討されています。