Column コラム

ローカル5Gとは

前回のコラムでご紹介したように、5Gでは高速大容量、超高信頼低遅延、超多数接続を特徴としたニーズの多様化が進むことが想定されます。そのため、携帯電話事業者による全国系のサービス提供に加え、地域ニーズや多様な産業分野の個別ニーズに応じたシステムが期待されています。そこで、これらの個別のニーズに柔軟に対応できるように、技術的条件や免許付与方針を制度化するものがローカル5Gとなります。

法制度

「通信事業者以外の様々な主体（地域の企業や自治体等）が、自ら5Gシステムを構築可能とするもの」と総務省紹介資料*1に記載されています。2019年12月の法制度化により28.2~28.3GHzがローカル5G用の周波数として割り当てられ、免許の取得が可能となりました。翌2020年12月の法制度化により、サブ6と言われる6GHz以下の周波数として4.6~4.9GHzが、さらに既存周波数の拡張として28.3~29.1GHzが新たにローカル5G用の周波数として割り当てられました。

ローカル5Gの特徴

ローカル5Gではプライベートな独自のネットワーク網として実現できるので、eMBB（高速大容量）、URLLC（超高信頼低遅延）、　mMTC（超多数接続）に関係する個々のパラメータを調整することでユーザニーズに合わせたネットワーク機能の最適化が可能です。例えば、現在の5G商用網では高速伝送機能であるeMBBを最も重視しているので、特に下り信号(基地局→端末)の大容量化を図ったパラメータに最適化されています。そこでは、上り信号(端末→基地局)に大容量が必要な監視カメラや、低遅延の応答が不可欠な建設機器の遠隔制御のようなアプリケーションには残念ながら適していません。
一方、ローカル5Gでは、アプリケーションによって大きく異なる通信要求にもパラメータの最適化によって対応できるようになっており、自社ニーズに合わせた通信システムの構築が可能です。その背景には、通信システムの様々な機能を独立したハードウエアユニットの組合せで実現してきた従来システムと異なり、（ローカル）５Gシステムでは汎用のサーバー装置等でのソフトウエア化や仮想化を積極採用していることが挙げられます。
このようにローカル5Gではネットワーク機能のソフトウエア化や仮想化によって、システム規模や性能が異なる多様な要求に柔軟に対応できるため、様々な分野での活用が期待されています。

ローカル5Gの課題

・低遅延

多くの5Gを紹介した資料では5Gの特徴の一つとして1msec以下の低遅延での通信が可能と紹介されています。URLLCでは確かに片方向の無線区間部分における値として0.5ms以下を掲げているので、5Gでは概ね1msec以下の低遅延が得られると理解されても仕方ないかもしれません。しかし、エンドツーエンドでこれを実現するためには、接続装置等での調整やフレームフォーマットの変更が必要です。

・上り高速通信
eMBBの関係資料ではDL（ダウンリンク：下り通信）でのスループットのみ紹介されることが多々あります。そのためか、弊社へいただくお問合せの中には、UL（アップリンク：上り通信）でも同様の性能を期待されている方が見受けられます。しかし実際にはULのスループットはDLほど高速とはなりません。高速にするためには多値変調方式、マルチアンテナ技術や無線フレームの変更等を活用する必要があります。

・免許取得
L5G装置は無線局免許の取得が必要であるので、アンライセンス帯（無線局免許不要の周波数帯）を使用する無線LANのように誰でも手軽に使用することはできません。5GMF（第5世代モバイル推進フォーラム）にて免許取得のためのガイドライン*2が紹介され、無線通信経験者であれば免許申請ができますが、なにぶん始まったばかりの無線方式です。予見困難な問題に遭遇する恐れもあるので、円滑な導入を図るには専門業者の助けを借りることをお薦めします。

・基地局のコスト
現在一般的に販売されているローカル5Gの基地局の費用は、他のプライベート無線ネットワークのシステムに対してまだまだ高額です。これはローカル5Gがまだ新しいシステムで、開発費がかかること、使用される部品も特別なものが多いことから、基地局の販売価格が割高になっています。今後ローカル5Gが普及していく中で、コストは低減されていくことが予測されます。弊社でも低コスト化を目指し、ローカル5G装置の開発を進めて参ります。

*1 総務省資料リンク先 https://www.soumu.go.jp/main_content/000644668.pdf
*2 5GMF資料リンク先 https://5gmf.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/local-5g-manual2.pdf